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第六話 のほほん?

last update Date de publication: 2026-06-30 21:48:39

「どうですか?」

 帰宅後、私専用ファッションショーを開いてくれる、ハルちゃん。

「いいよいいよー! どれも、ほんと似合ってる!」

 ぱちぱちと拍手する、たったひとりのオーディエンス

「これ、楽ですね~」

 長袖とデニムで決め打ちし、ちゃぶ台につく彼女。

「楽よねー、その手の。私も、それ系に着替えよっと」

 クローゼットから淡赤の長袖とカーキのチノパンを出し、着替える。

「ふふ、おねーさんも、似合ってますよ」

 微笑むハルちゃん。誰が見てもかわいい。

「じゃあ、きのこスパ、作りますね」

「ああ、ねえ。スパゲッティーの茹で方教えて?」

「いいですよ。えっとですね……」

 実際作りながら、レクチャーを受ける。お湯二リットルに、塩二十グラムも入れるのがコツなのだとか。

「へー。こんなに入れるんだ」

「はい、それで、ほんと変わるんですよ」

 ミドリさん、直伝のテクニック。どんな人なんだろう。会ってみたいような、会ってはいけないような……。

 一方のハルちゃんは、きのこの調理。醤油とバターもじゅうじゅう香ばしい、エリンギやえのきが、とても美味しそう!

 それぞれ完成したので、併せて和風きのこスパゲッティーにする。

 最後に、刻み海苔をまぶして完成~!

「いただきまーす!」

 うん、美味しい!

「ほんと美味しい! 自分で作ったんじゃないみたい!」

「お塩だけでそんなに喜ばれたら、恐縮しちゃいます」

 照れくさそうに、はにかむハルちゃん。

 さっきも思ったけど、ほんとの妹ができたみたいで、かわいい。

「あ、そろそろだ」

 お茶を用意し、テレビを点け、競馬にチャンネルを合わせる。

「今日も、スターランサーちゃんが出るんですか?」

「そんな事したら、馬が潰れちゃうよ。今日は、マリアージュベーゼちゃんの応援だよん」

 彼女のレースは、もう少し先。

 ハルちゃんと一緒に別のレースを観戦しながら、ベーゼちゃんの登場を待つ。

「このレースだよ」

 本日のメインレース!

 パドックで、ベーゼちゃんが、かぽかぽと歩いている。黒毛の美人……もとい、美馬さんだ。

「この子も強いんですか?」

「うーん、コテコテのスプリンターでねえ。スプリンターズステークスに、期待がかかるってとこかな」

「よくわからないですけど、それもすごいレースなんですか?」

 湯呑を手に、尋ねてくるハルちゃん。

「重賞戦線の猛者ってとこかな。あ、重賞についても、すごいレース程度の認識でいいから」

 さて、ベーゼちゃん。馬体は仕上がっている。現在、二番人気に推され、期待度も高い。

 これは、やってくれるよね?

 ベーゼちゃんが去ると、しばし、「アキおねーさんの競馬講座」を開催。

 初めて知ることの数々に、興味津々なハルちゃん。

 そして、各馬一斉にゲートイン!

 ベーゼは、スターランサーとは対象的に、逃げて逃げて逃げまくるタイプ。さあ、逃げ切りなるか!?

 スタート!

「はやいはやい! すごい飛ばしようですね!」

「それが、この子の持ち味なのよ!」

 思わず、握りこぶし。負けるなー!

 ゴール前、一番人気の先行馬に差されそうになるも……ハナ差で勝利!

「やったー!」

 ハルちゃんと、手をぺしーんと打ち合わせる。ふう、心臓に悪い。

「よーし、これで乾杯だー!」

 冷蔵庫から、缶飲料を取り出す。

「ビールですか?」

「ノンアルのね。私、呑み始めると自制が利かなくなるから、日~木はこれで禁酒してるんだ」

 一緒にタブを、プシュ、と開ける。

「カンパーイ!」

 酔いはこないけど、雰囲気は味わえる。まったく、ありがたい話だ。

「そういえばさ」

「はい?」

「なんか、私の趣味ばっかり披露してる気がするけど、ハルちゃんは何かないの?」

 最後の一滴を呷りつつ、素朴な疑問を呈す。

「わたしですか? ピアノでしょうか。もとは、嫌々やらされてた習い事だったんですけど、こっそり作曲するようになってから、楽しくなっちゃって」

 へえ~。

「聴いてみたいなあ、ハルちゃんのオリジナル曲~」

「いつか、披露したいですね。ところで、おねーさん」

「ほい?」

 唐突な逆フリ・・に、変な返事をしてしまう。

「その……キス、しませんか?」

「ひょっ!?」

 突飛な提案に、今度は変な声が出てしまう。

「まさかハルちゃん、ノンアルで酔ってるんじゃないでしょーね!?」

「違います、違います! 今までお酒の勢いで、あんなことしてたじゃないですか。でも、意識がハッキリしてるときに、こう、イイコトしたいなあって」

 ひょ~。ダイタンな子ですこと。

「でも、キスでいいの?」

「素面版の入門編ってことで」

 ほむ。

 何しろ、ヨッパ状態とはいえ、もう二度も致してる身。今更断るものでもないけれど。

「うう、照れくさいなあ~……」

 素面でこう迫られると、たじろいでしまう純情乙女ナノデス。

 するとハルちゃん、つつとこちらに寄ってきて。

「ダメ、ですか……?」

 私の両頬に手を添え、潤んだ目で見つめてくる。

 うう、この子犬のような瞳、断れな~い!

「は、恥ずかしいから、ハルちゃんからお願い」

「素面だと、すごい奥手なんですね。じゃあ、目、つぶってください……」

 言われた通りに、目を閉じる。ドキドキ……。

 すると、少し間があって、とても柔らかい感触が唇に。ひゃ~! 恥ずかしー!

「舌、入れていいですか?」

 ひえー! ハルちゃん、だいたーん! 本当にお嬢様~!?

「や、優しくしてね……」

 昨日、一昨日と、あんなことした人間の言葉じゃないね、これ。

 でも、これが素面の私なんだもん!

 あ、入って来たあ~!

 ただ、ハルちゃん舌使い上手い……。どこで覚えたの?

「ん、あむっ」

 しばし、熱戦。受けるに任せて、ハルちゃんの舌使いを愉しむ。

 唇を離すと、つ……とよだれが糸を引く。恥ずかしい。素面でやると、キスだけで、こんなにも照れくさいのか。

「良かったですよ、おねーさん」

 とろんとした目つきで、見つめてくるハルちゃん。恥ずかしさ倍増!

「今度は、私からしていい……?」

 余韻が名残惜しくて、おねだり。彼女は、こくりとうなずきました。

 第二ラウンド。

 思えば、私のファーストキス、小学校の親友、ふーちゃんだったな。

 特に恋愛感情とかなくて、「ためしに、やってみる!?」みたいな、いたずらノリで。

 でも、あるいはふーちゃんは、密かに本気だったかもしれない。今よりもさらに、オープンな時代じゃなかったから。

 今頃、どうしてるのかな。

 おっと。考え事なんて、ハルちゃんに失礼よね。

 舌を交わし合う私たち。とろけそう。

 もう、こうなると止まらない。そのまま勢いで、致して・・・しまいました。

 息も絶え絶えな私たち。素面で、初めてやっちゃった……。未だに、指に感触が残ってる。

 寄った勢いで覚えてないなんて、二回も、もったいないことしたなあ。

 ハルちゃんと見つめ合い、手をつなぐ。いわゆる、恋人つなぎ。

 ふふ、今日は色々濃厚だね。

 余韻を愉しみ終わったら、ご飯つくろっと。

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  • <社会人百合>アキとハル   最終話 秋の実り

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     どうも、最近オフは、やることがなくていけない。お掃除もお洗濯も、メイドさんたちがやってくれるしなあ。かといって、またメイドイン私……逆か。ま、それはちょっと辛いと理解できた。 というわけで、競馬中継など見ていたわけだけど、スターランサーが有馬で怪我し、療養中になってしまった。予後不良とかじゃなくてまだよかったけど、寂しいな。 もう一頭の推し、マリアージュベーゼも、パッとしない戦績が続いている。さっきも、六着に終わったところだ。高松宮では、ビシッと決めてほしいけどなー。 なんとも、気が沈みますなあ。 なんか、今日は視聴気分じゃないや。そういや、今日ミドリさんオフだっけ。たまには、ハルちゃん抜きでミドリさんと絡んでみようかな?「ス~マ~ホ~!」 某猫型ロボットの物真似をしながら、コール。「はい? どうされました?」「いやー、手持ち無沙汰だし、メイドさんのお手伝いは、私には無理だと悟ったんで、たまにはミドリさんと、なにかしようかと」 首筋をもみながら、提案する。テレビばっか見てたら、首凝っちゃったよ。「そうですね……読書も、目が疲れましたので、小休止中でして。構いませんよ」「じゃあ、とりあえず、私の部屋で」「かしこまりました」 冷蔵庫から炭酸水を取り出して飲んでると、ノックとともに「私です」と、ミドリさんの声が。「いらっしゃ~い。入って、入って!」「お邪魔します」 彼女が入ってくる。「さーて、ミドリさん。呑みましょうか!」「ええ!? 唐突ですね? というか、屋敷のお酒を勝手に開けるわけには……」 高級酒ばかりですもんね。「ノンノン。私の私物~。自分用に、こつこつ買い溜めてるんですよ」 と、クラフトビールを二缶出す。「おつまみも、ありますよ~。いきましょうよ!」 乾き物を、色々取り出す。「そうですね、久しぶりにこういうのも、悪くないかもしれません。お嬢様がいらっしゃらないのが、残念ですが」「一時間ぐらい前、ピアノ室覗いてみたら、ユキさんとかなりガチな話してましたよ。邪魔しないほうが、いいかもしれませんね」「左様ですね。では、二人で呑みましょう」 「そうこなくっちゃ!」と、ビールグラスを出し、慣れた手付きで注ぐ。美味しさを引き立てる白い泡が、シュワッと膨らむ。「乾杯!」 グラスを打ち鳴らし、ごくごく。

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     こんこん、がちゃ。ハルちゃんの部屋……。いない。 ピアノ室かな? てくてく……こんこん、がちゃ。ビンゴ!「ハールーちゃん。競馬見ーましょ」「すみません、おねーさん。今、取り込み中で」 スマホからも、ユキさんの声が聞こえる。作曲中か……。 ハルちゃん、曲自体もあれからブラッシュアップするとのことで、ピアノ室にこもることが多くなっている。 ミドリさんは仕事中でしょ。だからって、休日まで同僚とつるみたくないしなあ。 私にも、楽才なり詩才なりあったらな。ハルちゃんとユキさんの間に混じれるのに。 ただ食客やってるのもあれだし、今日は皆さんのお手伝いでもしますか!「ミドリさーん」 とりあえず、取っ掛かりとしてミドリさんを捕まえ、呼び止める。「はい、なんでしょうか」「私、暇を持て余してまして。で、ただ食客やってるのもアレだし、お手伝いしようかなあ、なんて」「ありがたいお話ですが、私の一存では決めかねますので……メイド長に、話を取り付けましょう」 というわけで、メイドさんたちが、わらわらとたむろしてお掃除している、エントランスへ。「……というわけなのですが」「なるほど、ありがたいことです。でもその格好では……余ってるメイド服、召されてみますか?」 おお! リアルメイド服! まさか袖を通す機会が訪れるとは。「はい、ぜひ!」 そんなわけで、更衣室へ。おお、これがメイド服! 何かワクワクするな!「おまたせしました」 着替えて、しゃらららん。「ではさっそく、拭き掃除をお願いします」 と、水入りバケツと雑巾をメイド長から手渡されました。 おっほう! さっすがメイド長! 着替えたてホヤホヤのボランティアにも、容赦なしですね! 彼女が、葵家の秩序を守っているのだなあ。「あの、メイド長さん」「長野と呼んでください」 おさの、おさの……あれ?「ひょっとして、シェフ長の……」「はい、彼は夫です。それで、ご質問は?」「あ、はい。ええと、どのあたりを中心に拭けばいいですか?」 メイドさんたちがめいめい動いているので、文字通りどこまでクリアされてるか、わからないのだ。「でしたら……」 と、結構な広範囲を指定される。うっひゃ~! でも、自分で言いだしたことだもんね! やるぞー! ◆ ◆ ◆「みなさん、休憩にしま

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